はじめに|「ちょっと育てにくい…」そんな感覚から始まる気づき
「他の子とちょっと違うかも」
「何を考えているのかわからない」
「育てにくい気がする。でも、誰にも言えない…」
そんなふうに感じる瞬間はありませんか?
子どもの発達のことで、他の子と比べて不安になったり、「もしかしてASD(自閉スペクトラム症)かも?」と悩んだりしている親御さんは、決して少なくありません。
でも、安心してください。
まずその「気づき」こそが、我が子の未来をより良い方向へ導く第一歩です。
このブログでは、ASDの基礎知識とともに、家庭でできる「診断テスト50問」をご紹介します。あくまで参考ですが、気になる傾向を可視化し、次の行動のヒントを得るためのツールとして役立ててください。
ASD(自閉スペクトラム症)とは?
ASDとは「Autism Spectrum Disorder(自閉スペクトラム症)」の略で、脳の発達に関係する特性のひとつです。人とのコミュニケーションや対人関係の築き方に困難があったり、強いこだわりや感覚の敏感さなど、行動や興味に偏りがあるのが特徴です。
ASDは「障害」と捉えられることもありますが、実際にはその子の持って生まれた“脳の特性”です。そして、グラデーションのように個人差が大きく、環境や支援によって能力が開花することも珍しくありません。
見逃されがちなサイン|こんな行動が気になったらチェック
次のような行動、あなたのお子さんには当てはまりますか?
- 名前を呼んでも返事をしない
- 集団行動が苦手、ひとりで遊ぶのが好き
- 視線が合いづらい
- 同じ遊びや話を繰り返す
- 急な予定変更にパニックを起こす
- 大きな音やにおいに過敏に反応する
- 会話が一方通行になる
- ジェスチャーや表情が乏しい
- こだわりのルールを持っている
- 人との距離感がつかみにくい
これらは、ASD傾向のある子によく見られる特徴です。ただし、ひとつでも当てはまればASDとは限りません。
だからこそ、全体の傾向を丁寧に見ていくことが大切なのです。
【診断テスト】ASDの傾向をチェック!50問リスト
このテストは、ASDの可能性を「傾向」として把握するためのものです。以下の50問について、お子さんの様子に当てはまるかを考え、
「はい」「いいえ」「どちらともいえない」で答えてください。
▶︎ チェック項目(番号は省略せず記載)
- 名前を呼んでも返事をしないことがある
- 視線が合いにくい
- 一人遊びが好きで、友達と遊ぶのが苦手
- 表情が乏しく、感情がわかりづらい
- 人の気持ちを理解するのが難しそうに見える
- 興味の対象が偏っている
- 予定が変更になるとパニックになることがある
- 特定の物や行動に強くこだわる
- 大きな音や光に過敏に反応する
- 不快な音に手で耳をふさぐことがある
- 言葉が遅れていた(または発語がない)
- 会話が一方通行になりやすい
- ジェスチャーや指差しをあまり使わない
- 質問に対して的外れな答えをすることが多い
- 名前を何度呼んでも反応しない
- 会話の順番を守れない
- 同じフレーズを繰り返すことがある
- 他人との距離感がわからない様子がある
- 親がいなくても平気で出て行ってしまう
- じっとしていられないことが多い
- 手をひらひらさせるなどの常同行動がある
- 特定の物を並べるのが好き
- 特定の服しか着たがらない
- 食べ物の好き嫌いが極端
- 匂いに敏感で嫌がることがある
- 足音や話し声に敏感で集中できない
- 突然怒り出す、癇癪を起こすことがある
- 自傷行為(頭を打つ、噛む)が見られる
- 人混みを極端に嫌がる
- 感覚が鈍く、痛みに鈍いことがある
- 特定の動きに強くこだわる
- 時間の感覚がわかりにくい
- 遊びのルールを守れないことがある
- ルールに厳格すぎる一面がある
- 生活リズムの変化を嫌う
- 睡眠に問題(夜中に起きる、寝つきが悪い)
- お風呂や歯磨きを嫌がる
- 体の動かし方がぎこちない
- 模倣(真似っこ)が苦手
- 自分の名前を呼んでも自覚がなさそう
- 他人の会話に割り込むことが多い
- 興奮すると声が大きくなる
- 説明を聞いても理解が遅いことがある
- 感情表現が突然で極端なことがある
- 人に関心を示さないように見える
- 抱っこを嫌がる
- 身体の一部を動かし続ける癖がある
- 言葉の裏を読まない(冗談が通じにくい)
- 記憶力が極端に良いことがある
- 数や順番、地図などに強いこだわりがある
結果の目安と受け止め方
このテストは、あくまで「傾向を知る」ための参考です。
次のような目安で判断してみてください:
- 0~15項目が「はい」:現時点でASD傾向は少ない可能性が高い
- 16~30項目が「はい」:ASD傾向が一部見られる。少し意識して様子を見守ってみましょう
- 31項目以上が「はい」:ASD傾向が強く見られる可能性があります。専門機関への相談をおすすめします
ただし、点数に一喜一憂する必要はありません。
大切なのは、「何がこの子にとって生きづらさになっているのか」を早く気づいてあげることです。
親として、いま何ができるのか?
「うちの子、もしかしてASDかも…」と感じたとき、多くの親御さんが真っ先に思うのは、
「これからどうすればいいの?」という不安だと思います。
ですが、今あなたがこのページにたどり着いて、少しでもお子さんの特性やサインに向き合おうとしているということ自体が、すでに親として大きな第一歩です。
ここからは、親として“今すぐできること”をいくつかご紹介します。どれも専門的な知識や特別な準備がなくてもできるものばかりです。焦らなくて大丈夫。ゆっくり、一つずつやっていきましょう。
1. 「なんでこんな行動をするの?」を「そういう特性なのかもしれない」と考えてみる
子どもが周囲と違う行動をするとき、つい「しつけが足りなかったのかな」「わがままなんじゃないか」と思ってしまうこともありますよね。でも、それは特性であって、決して“悪いこと”ではありません。
たとえば、音に敏感で耳をふさぐ子がいたら、それは「音に過敏な特性がある」から。突然怒り出したり、こだわりが強くて同じおもちゃばかり並べるのも、安心できるパターンを保ちたいという気持ちの表れかもしれません。
そう思えるだけで、接し方が変わります。叱るのではなく、「この子は今、不安なんだ」「安心できる工夫が必要なんだ」と捉えなおすことで、お互いに優しくなれる空気が生まれます。
2. 「わからないこと」を放っておかない|相談できる場所はたくさんあります
ASDかどうかを“ひとりで”判断するのは、とても難しいことです。だからこそ、一人で抱え込まずに、誰かに相談することが何より大切です。
相談先としては以下のような場所があります:
- お住まいの市区町村の「発達相談」窓口(保健センターや子育て支援センターなど)
- 小児科や発達外来のある医療機関
- 通っている保育園・幼稚園・学校の担任や支援員
- 発達支援センター、児童発達支援事業所などの専門機関
診断を受けることがゴールではありません。気になることを“共有する”だけでも、心が軽くなることがあります。
相談した先で「大丈夫ですよ」と言ってもらえるだけでも、ホッとできることがありますよ。
3. 同じ悩みを持つ親とつながる|“ひとりじゃない”と感じられる場所へ
ASDや発達に関する悩みは、身近な人にこそ相談しにくいことがあります。「わかってもらえないかもしれない」「変に思われたくない」――そんな思いから、誰にも話せず、気づかぬうちに孤立してしまうケースも少なくありません。
でも、全国には同じような悩みを持つ親御さんがたくさんいます。SNS上のグループや、自治体の親の会、支援団体などを通じてつながることで、「わたしだけじゃなかった」と思えることが、何よりの安心につながるのです。
「悩み」や「不安」だけでなく、「うちの子が最近こんなことをできるようになって…」という小さな喜びを共有できる仲間がいること。それは、これから先の子育てにおいて、かけがえのない心の支えになります。
4. 生活の中で“安心できる環境”をつくってあげる
ASD傾向のあるお子さんは、予測ができない状況や変化に強いストレスを感じやすい傾向があります。日常生活の中でできる工夫としては、「安心のルール」を決めておくことが効果的です。
たとえば、
- 「朝はこの順番で支度する」などの視覚スケジュールを貼る
- 外出時は、行き先と帰る時間をあらかじめ伝える
- お気に入りのアイテムを持ち歩いて安心感を保つ
- 急な変更があるときは、事前に何度か予告する
こうした配慮をするだけで、お子さんの心がぐっと安定し、親御さん自身のストレスも減っていきます。
5. 「完璧な親」を目指さなくていい
最後に、どうしてもお伝えしたいことがあります。
あなたが今、お子さんのことで悩んでいるということ自体が、もう十分に“がんばっている”証拠です。
世の中には「ちゃんと育てなきゃ」「普通の子にしないと」など、目に見えないプレッシャーがたくさんあります。けれど、ASDのある子にとって必要なのは、正しさや厳しさではなく、理解と安心感です。
「今日も怒ってしまった…」
「また不安に振り回されてしまった…」
そんな日があっても大丈夫です。人間だから、感情の波もあります。
大切なのは、また明日、気持ちを整えて向き合うこと。それで十分です。
心の奥に|あなたは、たったひとりの“この子の味方”です
診断がどうであれ、特性がどうであれ、子どもにとって一番大切なのは「自分をわかってくれる人がいる」という実感です。そしてそれは、多くの場合、親であるあなたしか与えられない特別な存在なのです。
焦らず、無理せず、子どもと同じペースで
寄り添いながら歩いていくことこそが、
一番の支援であり、希望の光です。
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