漢字を覚えられない…もしかして学習障害?気になるサインと対応法

漢字を覚えられない子供 学習障害

「何度書いても覚えられない…」そんな悩みを一人で抱えていませんか?

「毎日ドリルで練習してるのに、昨日覚えたはずの漢字を今日には忘れている」
「書き順も形もめちゃくちゃで、何度教えても直らない」
「他の教科はそれなりにできるのに、漢字だけは極端に苦手」
——そんなお子さんの様子に、戸惑いや心配を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。

漢字が苦手=怠けている、やる気がない、と思ってしまうのは、決して珍しいことではありません。けれど、もしかしたらその“苦手さ”には、見えない困りごとが隠れているかもしれません。
それが「学習障害(Learning Disabilities:LD)」と呼ばれる特性です。

この記事では、漢字が覚えられない子どもに見られる特徴や、学習障害との関係、家庭での対応のヒントまでを、専門的な視点と温かいまなざしで解説していきます。


学習障害(LD)とは?——「できない」の背景にある見えにくい特性

学習障害(LD)とは、知的な発達に大きな遅れがないにも関わらず、「読む」「書く」「計算する」など、特定の学習分野に著しい困難を示す発達の特性のことをいいます。
これはしつけの問題でも、本人の努力不足でもありません。脳の情報処理のしかたに違いがあるため、特定の学び方に適応しづらいという性質が背景にあります。

たとえば、漢字の学習に困難を感じる子の場合、「書字障害(ディスグラフィア)」の可能性があるかもしれません。これは、形を正しく記憶し、再現することに難しさを持つタイプの学習障害です。

また、「視覚認知」「空間認知」「記憶保持」などの機能にアンバランスさがあることも多く、一般的な「書いて覚える」学習法が合わないケースが見られます。


「漢字を覚えられない子」に見られるサインとは?

学習障害による漢字の苦手さは、ただの「不得意」とは少し違います。以下のような特徴が見られる場合、注意深く観察してみることが大切です。

● よくある特徴

  • 漢字の形を何度練習しても覚えられない
  • へんとつくりの位置が入れ替わる・似た文字を混同する
  • 一画ずつのバランスや空間配置がうまく取れない
  • 読み書きできる漢字の語彙が極端に少ない
  • 書こうとすると時間がかかり、強いストレス反応を示す

例えば、「海」を何度書いても「毎」と書いてしまったり、「言葉」と「葉っぱ」の違いがわからなかったりします。本人は真剣に取り組んでいるのに、結果が出ない。そんな苦しさを抱えている子どもは少なくありません。


学習障害との見分け方——やる気の問題ではないという視点

子どもが勉強を嫌がるとき、親としてはつい「やる気がない」「ふざけてる」と思ってしまいがちです。でも、学習障害の場合は「努力してもできない」ことに原因があるため、そこを見極めることがとても大切です。

● 見極めのポイント

  • 漢字以外の教科(算数・体育など)では問題がない
  • 学習の量に対して成果が伴わない
  • 短期記憶・作業記憶に偏りがある(書いた直後に忘れてしまう)
  • 教え方を変えると、理解できることがある

学習障害の子は、「苦手なことに非常に敏感で、できない自分を責めている」ことも多いのです。そのため、注意や叱責は逆効果になる場合があります。まずは「この子の特性かもしれない」という視点を持つことが、親としてできる大きな一歩です。


専門機関や相談先——一人で抱えず、つながる支援を

「もしかして学習障害かも」と感じたら、次にできることは“相談”です。診断を受けるかどうかよりも、「今、子どもにどんな支援が必要か」を見つけることが大切です。

● 相談できる場所

  • 小学校の担任や特別支援コーディネーター
  • 教育センター・発達支援センター
  • 児童精神科・小児神経科
  • 民間の発達支援教室や相談窓口

また、学校には「通級指導教室」や「特別支援学級」が設置されている場合もあります。正式な診断がなくても、「配慮が必要な子」として個別の学び方を提案してくれるケースも多くあります。

何より大切なのは、「この子に合った学び方がある」ということを、親が信じてサポートしていくこと。その姿勢が、子どもにとって大きな安心になります。


家庭でできるサポート法——叱るより“工夫する”学び方へ

「どうして覚えられないの!」と怒るのではなく、「どうすれば覚えやすいかな?」と一緒に考える姿勢が、子どもの自己肯定感を守ります。

● 効果的な工夫のヒント

  • 視覚支援:色分けカード、漢字パズル、形の似ている漢字をグループで覚える
  • 音と結びつける:漢字にリズムや歌をつけて覚える(例:「あの木の下に口があるで“本”!」)
  • 意味や成り立ちを知る:漢字の由来を学ぶことで印象に残りやすくなる
  • 無理に書かせない:読む・見て覚える方法も立派な学習法

● 親の接し方がカギ

  • 結果ではなく「がんばった過程」を褒める
  • できたときは大げさなくらい喜ぶ
  • 比較や否定をしない。「この子はこの子」と個性を尊重する

「覚えられた!」という成功体験を積み重ねることが、自信と意欲の原動力になります。
学習は「訓練」ではなく「共に育つもの」と捉えると、親も子も少しずつ気持ちが楽になるかもしれません。


まとめ——“できない”の奥にある力を信じて

学習障害とは、能力の欠如ではありません。あくまで「得意・不得意の偏りが大きい」という特性にすぎません。
そして、正しい理解とサポートがあれば、どの子も“学ぶ喜び”に出会うことができます。

「この子は、できないんじゃなくて、やり方が合っていなかっただけなんだ」
そう気づいた瞬間から、親子の学びは前向きなものに変わっていきます。

たとえ周囲と違っても、その子らしいペースで進めばいい。
焦らず、責めず、信じてあげること。
——それが、子どもにとって一番の安心なのです。